この記事は Vim Advent Calendar 2014 の 25 日目の記事です。
Google が、様々な言語に対する自社内でのスタイルガイドを公開しているのはご存知でしょうか。C++ のものや JavaScript のものなどがあり、この辺りは割と有名かと思います。
では、Vim script のものがあるのはご存知でしょうか?
Google は、Vim script について、2 つのガイドを公開しています。
前者がカジュアルユーザー向け、後者がヘビーユーザー向け、といった位置付けのようです。さすが、Google がまとめているだけあって、なかなかポイントを抑えています。
ただ、これはあくまで Google が社内向けに作ったもの。鵜呑みにしてはいけない、もしくは、一般の人が使う場合は参考にしない方がいい部分もちらほら見受けられます。
そこでこの記事では、この 2 つのスタイルガイドを見るにあたって注意すべき点をまとめようと思います。全て個人の見解です。引用に入っている訳は、私による勝手訳です。
全体について
maktaba が前提になっている
Google が公開している、maktaba と言う Vim プラグイン向けのプラグインライブラリがあります。
これらのガイドでは、事あるごとに、Vim のこの機能は使わないで代わりに maktaba のこれを使え、のように指示してきます。
しかし、誤解を恐れずに言うと、maktaba はその仕組み上使うべきではありません。
ざっくり簡単に理由を言うと、maktaba は $ から移すことができない jQuery のようなものであり、別の言い方をすると、URL にバージョンが含まれていない Web API のようなものです。今後互換性のない変更が入った瞬間に死亡する未来がありますし、今でも、maktaba のバグに依存した動作をするプラグインはバグが修正されると死にます。
と言うわけで、maktaba 云々と書かれている部分は華麗にスルーするのが良いです。
Google Vimscript Style Guide
Regular Expressions
Prefix all regexes with \m\C.
全ての正規表現は \m\C で始めること。
\m は 'magic' がオンの状態で正規表現の解釈を行い、\C はパターン全体を大文字小文字を区別するようにします。
これは確かに誤爆を防ぐのには役に立ちますが、毎回指定するのはやや冗長です。
正規表現を受け取る Vim script の関数のうち、'magic' オプションが適用されるのは search() と searchpos() くらいです。
よく使う =~# も 'magic' の影響は受けません。
'ignorecase' オプションの影響を受けるのは、match()、matchend()、matchlist()、matchstr()、search()、searchpos()、searchpair()、searchpairpos()、substitute() になります。多いようですが、match() とその派生、search() とその派生、substitute() なので、系統としては 3 つくらいです。
この辺りはざっと調べたものなので、足りなかったり違っていたら教えてもらえると助かります。
自信がなければ \m や \C を付けておくのは悪いことではないですが、必須にするほどでもないかな、と思います。
Type checking
Use strict and explicit checks where possible.
可能ならば厳密かつ明示的な型チェックをしなさい。
is# などを使え、というのはその通りですが、全ての変数を使う前に型をチェックするのは冗長になりすぎます。
例えば Ruby を書いていて、全ての関数で、その引数について型のチェックをするコードを書くでしょうか? 書きませんよね。
期待した型でなければ、大体の場合は例外が飛ぶので、きちんと例外を処理すれば問題はないでしょう。たまに運悪く期待しない状態のまま先に進んでしまうこともありますが、その時はその時です。
Python / Other Languages
Python
Use sparingly.
Use python only when it provides critical functionality, for example when writing threaded code.
Other Languages
Use vimscript instead.
Avoid using other scripting languages such as ruby and lua. We can not guarantee that the end user's vim has been compiled with support for non-vimscript languages.
Python は慎重に使いなさい。他の言語は使ってはいけません。
はい。Google なのでお察し、といったところでしょうか。Python だけ許可して他を許可しない理由が全く説明されていません。
個人的な見解を述べるならば、外部インターフェースは余程の必然性がない限りは使うべきではありません。理由は Google が説明している通りで、ユーザーの Vim で使えるとは限らないからです。これは当然 Python にも言えることです。
ただ、あなたが書く Vim script があくまで自分向けのものであれば、書き易いように外部インターフェースを使うことは選択肢となりえるでしょう。他言語であればすでに揃っているライブラリを Vim script でわざわざ書き直すような真似は、一部の変態さんたちに任せて、あなたは使いなれた言語で使いなれたライブラリを使えばよいのです。
…私は変態さんなのでもう手遅れです。
Commands
In the plugin/commands.vim or under the ftplugin/ directory, defined without [!].
plugin/commands.vim か ftplugin/ ディレクトリに、[!] を付けずに定義します。
plugin/commands.vim に、と書いてますが、絶対にやってはいけません。
最近でこそ Vim プラグインはプラグインマネージャでインストールして、runtimepath を追加していく方式が流行っていますが、本来は Vim プラグインは 1 つのユーザディレクトリにまとめていれていくもので、そのような運用も可能になっているべきです。
みんながみんな plugin/commands.vim にコードを書いたら、当然ファイル名が衝突します。
ちなみにどうやらこのファイル名のルールは maktaba によるもののようです。
[!] については、適切なコマンド名を付けていれば、ユーザの定義を上書きすることはほとんどないかとは思いますが、ここはどちらでも良いと思います。
Autocommands
Place them in plugin/autocmds.vim, within augroups.
plugin/autocmds.vim に、augroup 付きで定義しなさい。
Commands と同じファイル名の問題。
Mappings
Place them in plugin/mappings.vim, using maktaba#plugin#MapPrefix to get a prefix.
plugin/mappings.vim に、maktaba#plugin#MapPrefix を使って定義しなさい。
Commands と(ry
maktaba(ry
Naming
Prefix all variables with their scope.
全ての変数にはスコープのプレフィックスを付けなさい。
l: については無理に付ける必要はないと思いますが、一部の変数名が v: と衝突する可能性があるので、付けた方が安全ではあります。
私は省略する派です。
Google Vimscript Guide
こちらはヘビーユーザ向けということで、Style Guide の方の内容も含まれています。重複していない部分について言及します。
Structure
ここに書かれているものの多くは maktaba 前提の構成のようです。
Documentation
Use vimdoc.
vimdoc を使いなさい。
この vimdoc というツールは、私もあまり詳しくないのですが、軽く調べてみた限りだと maktaba の構成に依存しているようです。
あとは変則的な help に対応しているのかがちょっとわかりませんでした。
と言うわけで、個人的に問題があると思う点を挙げてみました。
結構色々書きましたが、最初に言った通りポイントは抑えられていて、maktaba に絡まない部分はかなり参考になります。つまり諸悪の根源は maktaba…。
これで今年の Vim Advent Calendar は終わりです。でも、皆さんの Vim ライフは始まったばかりです。それではまたいつの日か、未来でお会いしましょう!